過当競争再来?~函館のホテル事情~
実は、数ヶ月前から私の耳には入っていたことなのですが、JR北海道グループが経営するホテル「JRイン」が、JR函館駅に隣接する場所に建設されることが発表されました。その規模250室。当然のことながら北海道新幹線開業に合わせての進出です。
早速”視察”したJRインのイメージでは、予想通り宿泊特化型ホテルの進化系。すなわち、旧来型の全国チェーンホテルより客室設備が充実している一方で、朝食などはパンとドリンク+αと極めて簡素化して無料サービス。自動チェックイン機を導入するなど、少ない人数で多くの客を賄えるよう工夫されています。・・・というより、先発組の良いとこ取り、良くも悪くも新規参入が有利に働く、装置産業の厳しいところです。
おそらく札幌での成功で、買収した帯広、そしてこちらも計画が発表された旭川と合わせて道内主要地方都市への進出でしょう。本業に専念するため、ホテル事業を売却する企業もあれば、副業として拡大するところあり。キャリアうんぬん関係なく、どちらが良いかはわかりません。ただ、ここ函館において大規模な宿泊特化ホテル進出が正解かというと疑問符が付きます。
大都市とは異なり絶対的なビジネス需要が少ない地方都市。支店の撤退で出張需要が増えるとの見方もありましたが、大企業が無い函館ではそれも微々たる程度。さらに函館には既に多くの宿泊特化からビジネスクラスのシティホテルまで、特にこの手のタイプは供給過多。どの程度持続するか疑問の新幹線効果で、繁忙期や大きなコンベンションがあるときはほとんど影響は無いでしょうが、年の半分を占める閑散期の宿泊客数は繁忙期の半数以下。そこが2割、3割増加しようが、供給増加による影響がまともに現れることは目に見えています。
おそらくJRイン自体はそこそこの集客が可能でしょう。何より駅直結で低価格。旅行商品での宣伝効果も自由自在。JRと契約し、駅が近いということで、電車に何らかのトラブルがあったときにはそのおこぼれに預かることもある当ホテルが、その煽りをうける際たるケース。それ以上に駅周辺に多数ある同タイプのチェーン店、ビジネスクラスはまともに客の奪い合い。その結果、価格競争が再燃(持続中?)し、新規参入ホテルを含め市内全宿泊施設に蔓延することになるのでしょう。予想されてたこととはいえ、新幹線開業による観光客増加がそのままプラスに働かないことが現実となりました。
函館ではプチバブルが起きたリーマンショックに前後して、全国チェーンのビジネスを中心に多数のホテルが乱立。客室数がピークとなった2009年は、観光客の減少もあって市内宿泊施設の多くは最悪の状況でした。しかしこの過当競争のもと、昨年、一昨年とタイプを問わず複数の宿泊施設が市場から撤退。震災の影響から比較的早く立ち直り、今ひと息つけているのは、この供給調整によるところが少なくありません。
そんなところに撤退した複数の施設をあわせた数に匹敵する集客力を誇る施設が、最高の立地に進出するわけです。ある程度覚悟していましたが、厳しい現実。市場原理主義の中にいる以上、この現実からは逃れられません。継続しているだけでは、生き残れない時代。同じ土俵に上がるつもりはありません。築40年を越える稀少なホテルは、策を持って戦います。
多くの人に読んで頂くため、参考になったらクリックして下さい。
↓↓↓
「函館の経済・行政etc」カテゴリの記事
- Black Thursday 2nd?(2025.04.04)
- 新年度考察(2025.03.28)
- 新幹線が街を変える(2025.02.11)
- 悲願!ANA羽田便夜間駐機へ(2025.01.23)
- 今週末はGLAY(2025.01.22)
コメント