北海道新幹線~光の影で(2)~
JR北海道は、将来北海道新幹線が札幌まで延伸された際には、函館⇔新函館間を並行在来線とみなし、経営を分離する方針であることを表明しています。新幹線が函館まで来る4年後のさらに先、国債という借入に依存してツケを将来に回し、現在を取り繕うシステムが世界的に機能しなくなってきた昨今、札幌延伸が可能かどうかも怪しい雲行きですが、遠い将来の問題でも、この街の存亡に関わることでもあるので、再度触れない訳にはいきません。
江差線とは異なり、それなりの需要が見込める新函館⇔函館間。バス転換となると現市街地の死活問題ですので、鉄路を維持することが模索されるでしょう。では、他地区に見られるように、第3セクター方式で鉄路さえ維持できればそれほど問題にならないのでしょうか。
青森県三沢市。八戸市から北へ20km程、人口4万人少々ながら、米軍基地があり独立した地方都市としてそれなりの機能を持った街です。この三沢市、新幹線が新青森まで延伸したことによって、交通事情が著しく不便になりました。
新幹線延伸前、東北本線三沢駅は特急が停車し、私鉄の十和田電鉄も乗り入れ、観光地である十和田湖へのターミナル駅でした。更に集客力のあった古牧温泉(破綻したが)に隣接することもあって、規模の割りに乗降客の多い駅でもありました。それが、新幹線延伸によって、東北本線が並行在来線としてJR東日本から経営分離され、第3セクター青い森鉄道になったことで状況が一変します。
JRは経営が違う第3セクターの面倒を見ることはありません。端的に現れたのは接続の問題です。新幹線の最寄り駅、八戸発着の終電への接続列車が無くなっただけではなく、新幹線接続への配慮が無く、上下とも1時間以上接続が無い列車が多数存在します。また、何らかの事情で青い森鉄道が遅延し、接続がある新幹線に間に合わなくても、新幹線が待ってくれることもありません。
発券システムの違いにより、青い森鉄道は当日の切符しか販売しないため、新幹線で八戸駅で降りても一度駅舎に戻り、新たに切符を買って青い森鉄道のホームに向かわなくてはならなくなりました。さらに経費の問題から、かつてあった八戸駅の新幹線と在来線の乗り継ぎ改札が廃止されたため、青い森鉄道を利用した乗客は、新幹線の切符を持っていてもコンコースを通って隣のホームに行けず、一度駅舎に戻らなくてはなりません。新幹線が延伸して、三沢市民は東京も仙台も遠くなりました。
信じられないことに、三沢駅ではJRの切符を買える時間に限りがあります。他社であるため券売機などは無く、JRの切符は駅員の手売りです。人件費削減のため人手が足りず、限られた時間の販売となるそうです。また、JRの切符を買うのにクレジットカードは使えません。JR切符の販売手数料よりも、カード会社に払う手数料が高く、カードを利用されると赤字になるためだそうです。今まで通り、発券システムをJR東日本に合わせれば良いではないかと思うかもしれませんが、それには莫大な費用がかかるといいます。そんな訳で、JR三沢駅を利用する人も、切符の販売額も「青い森」になってから大幅に落ち込みました。三沢駅は中心街から離れていますが、周辺の商業者の疲弊は言うまでもありません。追い討ちをかけるように、新幹線開業により需要の落ちた十和田電鉄は、三沢⇔十和田間の廃線を決定しました。この嘘のような本当の話。これが3セクの現実です。
では、青い森鉄道はそれほど厳しい経営を強いられるほど、利用者が少ないのかというとそうでもありません。特に、通勤通学の時間帯、青森駅に入る車輌は超満員。苦情緩和のため、いわて銀河鉄道から車輌を借りているほどです。また、青い森鉄道への出資は、県が8に対し、沿線自治体が2。さらに県が鉄道資産を買取り、3セクは赤字にならない範囲で鉄道使用料を払えば良いという、県による手厚いスキームが出来上がっています。鉄道経費の大半を占める、維持管理費が不要なのです。にもかかわらず、限々の経営。青い森鉄道に限らず、3セク鉄道の経営には厳しい現実があります。
この現実を将来の新函館⇔函館間に当てはめてみましょう。観光客の利用で需要はそれなりに見込めます。しかし、今回江差線で道が示したように、道と沿線自治体の負担比率が1対1で、鉄路や駅舎の維持管理費をその比率で3セクが見なくてはならないのなら、沿線自治体=函館市の負担は計り知れません。「青い森」と同等とみると、折角新函館駅のホームが、新幹線と在来線が同じホームに着く「対面式」ホームになっても、3セク以降、ホームの中間に冊が出来るかもしれません。函館駅は、JRの切符が買えない不便な駅となり、その結果、市民はみんな車で新函館へ向かいます。リレー列車しか着かない巨大な函館駅の利用者は減り、当然、中心市街地は一気に衰退・・・。
長くなりましたが、こんなことにならないよう、函館市は新函館⇔函館間のJRによる経営継続を、今から強く求めていかなくてはなりません。
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